株式会社ヒューエンス
ゼロ・エミッション型リサイクルシステムと地域イノベーション(2)
丸山 敏彦(社外取締役) 略歴へ

国は、科学技術駆動型の地域社会への展開として産学官連携による地域イノベーション創出への取り組み等、地域振興に関してかつてない程の力の入れようである。循環型社会も地球環境問題との関連で重要な位置づけであることは言うまでもない。その構築に向けては@発生抑制(Reduce)A再利用(Reuse )B再生利用(Recycle)C熱利用D適正処分の基本的なアプローチがあるが、そのうち地域にとってニーズが大きく、緊急を要するアプローチとして家畜排泄物の利活用に係わるリサイクル技術もその一つである。それも牛糞尿のようなスラリー状バイオマスから新しい価値を生み出していくゼロ・エミッション型リサイクルシステムの構築である。そのような観点から現在、当社が中心となって産学連携による開発を進めているのが、以下のような技術システムである。
<バイオガスプラントシステムからゼロ・エミッション型リサイクルシステムへ>

(図をクリックすると拡大表示できます。)
新システムでは従来システムのメタン発酵プロセスからの粗バイオガス及び消化液について物理化学的処理を主体としたプロセスのもと、@メタン高純度化A機能性固形肥料化及びB最終汚水の浄化処理機能の付与によりゼロ・エミッションを可能にするものである。上記3つのアウトプットを同時に目指すには複数技術の組み合わせの「技術のシステムインテグレーション」が重要である。新システムではその観点から当社あるいは連携企業が個々に開発してきた環境関連技術を各プロセスと係わる要素技術として組み込みながらこの最適システム化を進めている。
新システムの事業展開に関しては当社の主力商品である旋回噴流式オゾン酸化処理の特許技術を最重要なプロセスの最終汚水浄化処理に駆使しながら北海道を中心として全国広く、数多く設置されているバイオガスプラントシステムの不具合からもたらされるニーズ及びPFI等導入による新規市場に対応しようとするものである。その一方で、有機スラリーのバイオガス化処理時間の短縮と発生効率を向上させるため、自社所有の新技術による検討、あるいは連携企業の物理化学的処理による水素系バイオガスの直接的な生産に関する基礎的検討等をもとに新システムの進化に常に努めているところである。
新システムでは農水産系廃棄物のバッズ(Bads)から地産地消エネルギーに向けた高純度メタン及び農産物用機能性固形肥料のグッズ(Goods)を生み出しながら、バッズを限りなくゼロに近づけることを目的としている。その一方で、現状のメタン発酵プロセスでは、その長い処理時間が全体システムとして機能するうえで大きな律速要因となっているため、新しくバイオガス化プロセスの検討も進めている。そのような活動によって循環型社会の構築に深く係わる"地域と産業に根ざしたイノベーション"に結び付けるための実践に少しでも地域企業としての役割を担っていきたい。
(次号「循環型地域システムのデザインと"技術システム"対応(3)」に続く)

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