株式会社ヒューエンス
循環型地域システムに係わる要素技術群とその応用(4)
丸山 敏彦(社外取締役) 略歴へ

これまでに循環型地域システムの構築に向けたアプローチとして、技術のシステムインテグレーションによるコーディネート事例を紹介してきた。そこで活用された技術群は国事業(RSPコーディネート事業に:JST)のもと、地域ニーズへの対応から発掘・育成された技術シーズである。以下、それらを含めて「エネルギー・食・環境」分野において蓄積された要素技術群とその概要である。

 1.要素技術の題目とその応用分野
@有機質分解鉄触媒利用技術
微量鉄触媒による土壌活性化と農作物の高品質・高収量化、農水産加工廃棄物の有機肥料化、鉄触媒水の給餌による家畜の増産・高品質化、バイオガス化促進剤等
A高速植物工場生産技術
立体移動式栽培法と新液体肥料等による作物の高品質・高収量化 等
B自然氷(潜熱)エネルギー利用システム(アイスシェルター)技術
農産物保蔵、供給システム(0〜5℃、恒温恒湿)、住環境空調・換気 等
C静電気等利用食品加工技術
農水産物(含粉状食品)等を対象としたスモーク・フレーバ(ハーブ類)の含浸処理による回分・連続式新食品加工 等
D脱水・乾燥、微粉砕・分級、造粒化技術
農水産物・副産物の微粉末、複合造粒化による新規機能性食品・食材、高級魚介類(ウニ・アワビ等)用餌料 等
E酸−電気分解処理技術
水産系廃棄物(ホタテウロ・イカゴロ等)からの重金属(Cd等)除去と高次リサイクル
Fオゾン利用技術
各種汚水処理、農産加工廃棄物(ポテトパルプ等)の漂白・滅菌、住環境対応型殺菌・悪臭除去 等
G旋回噴流式高速攪拌技術
融雪(戸建住宅・公共用)、水産加工廃棄物中重金属抽出・油脂分分離処理、粗ガス(バイオ・水性ガス)の洗浄、高品質原料化前処理リアクター 等
H酵素利用技術
農産物の機能性食品素材加工、農水産加工副産物の酵素前処理によるペプチド等の新規機能性食材加工 等
I流動層加熱処理技術
有機系廃棄物(鶏糞・肉骨粉等)の自然式加熱処理、無機系粉体の加熱反応処理による新機能性(調湿、抗菌性等)素材加工、乾燥空気の大量発生装置 等
J高圧造粒技術
民生・中小ボイラー、ガス化用及び大型ボイラー(火力発電等)用石炭・バイオマス複合固形燃料「バイオコール、C.C.B.」、新規形態の機能性複合食品素材加工 等

 2.要素技術群の応用検討事例
@農業地域汚染地下水の高速浄化技術
汚染地下水硝酸イオンの新規な固体触媒による水素還元を中核技術として前段の旋回液体噴流(オゾン併用)式、及び後段の気泡噴流式高速攪拌処理のプロセスで構成する飲料化システムについて各単位操作からの基礎的確認。
A有機系廃棄物のバイオガス化新処理技術
有機スラリー(固形分10%)の物理化学的処理(微量鉄触媒・低電圧)により直接的に水素系バイオガス(約86%、スラリー1m3当り22m3、96hr)の生成を基礎的に確認。
B肉骨粉加熱処理物の量産化及び高度利用技術
肉骨粉(レンダーリング:5000kcal/kg)の流動層加熱処理(720℃)により低コストで量産化技術に目途。処理物は約37%の燐酸を含み、コマツナ等栽培試験により化学肥料に劣らない肥料効果。
C難処理性水産系廃棄物(ヒトデ)の有効利用
旋回噴流式攪拌技術処理による温水、有機溶剤抽出物の濃縮・精製脂溶性画分は植物(コマツナ)生長の促進、水溶性画分は生長の抑制。ヒトデ微粉末はイエバエ等、羽化率の大幅な低減効果。
安全・安心な農産物生産・食品加工等のための環境調和型生物肥料・農薬等開発への期待。
D農水産系複合微粉末食材を利用した新規機能性食品加工技術
ハーブ(オレガノ・ヒソップ)とビートファイバーの複合化により機能性の増大、ナトリウムの排泄易さ等の代謝改善効果、併せて食品加工性及び市場性(価値化食品)について試験販売、アンケート調査等により確認。地域内に止まらず、広域な機能性バイオマスを活用した複合化食材による"未病"等市場に向けた研究開発とビジネスチャンス支援。
E道産機能性バイオマスを利用した健康食品
ハナマス花弁のビタミンCは大根の2〜5倍、果実の約10倍。その抗酸化活性は不飽和脂肪酸の酸化による老人臭の消失、糞便(ヒト)の大腸菌の減少とビフィズス菌の増加による整腸作用に効果。老齢化に伴う種々の疾患などへの効果をもとに大学発ベンチャーが種々の商品化。
上述の技術群はそれぞれに直接、間接的に事業化に結び付いたが、それら技術群は個々に末広がり的な応用性に富む技術でもある。その新たな視点からの活用としては単独技術対応では難しい緊急、かつ重要な地域的社会ニーズに対して、技術のシステムインテグレーションによるアプローチもその一つである。その視点に立って、それぞれの関連研究者・企業等のネットワークのもと、ポストRSP事業において民間ベースで進めているのが以下の基本的スキームの産学官によるコーディネート活動である。
現在、潟qューエンスが中核機関となって産学官連携で進めようとしているのが、先の(2)及び(3)号に述べた循環型地域システムの構築に係わるプロジェクトである。因みに両プロジェクトで活用される要素技術群は(2)号の「ゼロエミッション型リサイクルシステム」においては@,F,G及び(3)号の「製糖工場副産物のリサイクルシステムにおいては@,D,F,G,Jの技術シーズである。それら個々の応用性と機能性等を効果的に生かしたシステムインテグレーションのもとにより実践的な循環型地域システムを目指したい。
(次号「農水産系廃棄物リサイクルに係わる研究開発の方向付け(5)」に続く)

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