大地薫る
朝、木々の下に赤や黄色の影が現れるようになりました。昼間、影の主たちは秋風に誘われて、からからとにぎやかに旅へと出かけます。あるものは水たまりに足止めされ、あるものは草むらの中で一休みし、あるものは屋根よりも高く舞い上がりながら遠くを目指します。大抵のものは、毎夜、露と一緒に地面で静まり、凍れから解かれる昼間に再び旅を始めます。大地が厚い雪にすっかり覆われてしまうまでの間、そんなことを繰り返しながら、帰るべき場所を探し続けるのでしょう。
ヨーロッパナラでしょうか?カシワよりも深い切れ込みのある葉を見つけて嗅いでみると、かすかに花のような芳香がありました。そう言えば、他にも、とても良い香りのする落ち葉があると聞いたことがあります。冬が近づくと、木々は必要な養分を葉から回収し、必要のなくなった成分を葉へ貯めて落葉させることがあるそうです。落ち葉がまとった香りは、もう役目を終えたものから生まれているのかもしれないと思うと、何だか不思議でもあり、必然でもあるような感じです。冬を越えて、再び暑い季節を迎える頃には、よい香りのする土になっているはずだからです。花の香りは虫たちのため、落ち葉の香りは、土の中で生きているもっともっと小さな生き物たちのためでしょうか。
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