消化不良
週末の好天にタイミングが合わず、分厚い雲に太陽が隠れているような日にばかり、山歩きをしています。当然、標高が上がるにつれて、雲に近づいていくことになりますし、場合によっては、始めから終わりまで白雲の中、ということもあります。出発するときは、「ミストが涼しくて気持ちいいぐらいだ」などと考えていると、途中から雲なのか雨なのか区別のつかなくなった水分でしっとりとしてしまった体に、山裾から吹きあがってくる突風を受けることになります。
勝手知ったる場所であっても、こうなると、先へ進むことは断念せざるをえません。途中、下山してきた方に「花畑が素晴らしかった」などと聞きながらここまでやってきたものですから、心残りがありすぎて仕方がありません。その花畑まではもう数百メートルのところだったのです。
泣く泣く引き返した帰り道、スナゴケというのでしょうか、星形の苔マットの上に、イワギキョウが咲いていました。庭先で見ているような桔梗よりもずっと、背丈も花も小さく、淡い色をしています。山歩きでは見慣れた植物たちですが、この日は何だか少し雰囲気が違って見えます。しっとりとした空気は、彼らを生き生きとさせてくれるのでしょう。そのままテラリウムにでもして持ち帰りたいぐらいです。そうです、こんな天気の時にこそ美しさを増す花たちを見たかったのです。今回は、花畑まではたどり着けませんでしたが、小さな植物たちの姿に、引きずっていた消化不良の気持ちも、ほんのり和らいだ気がしました。
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