葉染まる
背の小さな草木の特徴は、花や実によく表れますが、秋色に染まる葉にも、負けない個性が詰まっています。
鮮やかな赤に染まるのはチングルマです。まだ綿毛も残っていて、真上からのぞき込むと、ふわりとした白と、てらてらとした赤のコントラストが、とても印象的です。スミレやミネヤナギ、イワツツジの仲間たちの黄色は、石や岩がごろごろとした灰色の風景の中でも、スポットライトを当てたかのように明るく見えます。イワブクロなんかはオレンジに近い茶色で、革細工のような渋さがなかなか素敵です。常緑のガンコウランやツガザクラの仲間は、緑に深さを増して、どっしりとした落ち着きを与えてくれます。
夏の間、花たちの背景になることはあっても、それ自体が注目されることは少なかっただろう葉っぱたちが、秋色に染まった途端に主役に躍り出ます。美しい花を咲かせるため、沢山実をつけるため、冬を越す力を蓄えるため、太陽が高く昇る間、せっせと光合成に精を出し、その役目を終える間際が一番華やかだなんて、人間の理屈に当てはめれば、なんだか切ないような気がしてしまいます。でも、長い眠りについて、やがて土に還れば、またすぐに誰かの役に立てるのですから、どんな姿形でいるかは、ささいなことなのかもしれません。今年もお疲れ様でした、一足早く、そんな気持ちになります。
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