緑の森
木々が落葉を終え、雪が大地をすっぽりと覆うまでの間、ほんの少し、寂しげな世界が広がります。日が短くなり、寒さを感じる時間が長くなるからなのかもしれません。こんな週末は、さぁどこへ出かけようかと、悩むことも増えます。窓から外を眺め、西の空も北の空も真っ白!とくれば、今日は南かな?お天気任せで方角が決まり、以前、雪が深くて行けなかった湖がその方角にあったことを思い出して、目的地が決まりました。
訪れる人がそう多い訳ではないのか、車一台がやっとの林道は、ところどころ心もとない路肩の横を慎重に抜けなければなりません。その反対側には、葉が生い茂る夏でもほどよく光が差し込みそうな森が続いています。やや標高が上がり、湖が近づいてくると、森には緑が目立つようになりました。樹冠にではなく、林床にです。ごろごろとした岩の上に、倒れた木の上に、緑のマットがびっしりと敷き詰められた森が現れます。師走も目前のこの時期、常緑樹の少ない森の中が、こんなに明るい緑で満たされているとは思ってもみず、なんだか狐につままれたような気分です。
海からの湿った空気が集まりやすい場所なのでしょうか?でも、たとえ海沿いにあっても、こんなに立派な苔の森は、この辺りではあまり見た記憶がありません。木霊にも会えそうです。新緑の季節ならば、頭上も足元も、きっと森全体が緑に包まれるのでしょう。そう想像したら、早くその季節が巡って来ないものかと、気が急いてしまいました。冬は始まったばかりで、新緑は半年も先です。お気に入りの場所が一つ増えたのと同時に、悩ましい時間が始まりました。
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