新しい一日
マイナス19度まで気温が下がった朝、いつもの橋へ出かけます。雪が積もった後でしたから、きっと川霧が龍のように立ち昇っているだろう、ダイヤモンドダストも見られるかもしれない、そう予想しながら家を出ましたが、どちらも外れでした。夜明け近くまで薄い雲が空を覆っていて、放射冷却が起こらなかったのかもしれません。それでもマイナス19度まで冷えるのだなぁと、あらためて驚きます。
白化粧をした木々の間から、ほんわりとお風呂の湯気のような川霧が上がり、その奥に帯広の街が浮かびます。四角い建物が並んでいるけれど、向こう側はおとぎの国だと言われれば、素直に「そうか」と納得できそうな神秘的な空気が、街を覆っているように見えます。こうして橋の上に立ち、静かな対岸を眺めていると、川が世界を分けていて、“はし”というものが別の世界をつなぐものであるという古くからの意味が、分かるような気がしてきます。
新しい一年が始まった途端、胸が痛むようなことが起こりました。この一年は一体どうなってしまうんだろう、そんな不安もよぎりました。きっと、予想もできないことはこれからも起こることでしょう。でも、だからこそ、私たちが元旦を迎えるときに感じる、身のまわりを清める心を、初日の出をありがたく思う心を、美味しいものを味わう嬉しい心を、毎日の暮らしの中にも、仕事の中にも、同じように持ち続けなければいけないのかもしれません。