株式会社 ヒューエンス
HUENSは、水と空気をきれいにして、自然に戻す
環境浄化システムをご提供させていただく会社です。

 争奪戦(2)


 福寿草の葉も大きく広がり始め、清々しい青のエゾエンゴサクの花も姿を見せ始めました。スプリングエフェメラル(春の妖精)と呼ばれる、春の時期にだけ姿を現す小さな花たちの、華やかな季節の始まりです。
 そんな優雅な地面の上とは対照的に、木の上ではエゾリスの激しい争奪戦の一幕がありました。
 既に尾が茶色く夏毛に変わった一匹のエゾリスが、横に伸びた木の枝の上で、忙しそうに毛並みの手入れをしていました。しばらくして、同じ木に一匹、そして、少し離れた木に別の三匹が、日向ぼっこでもしているかのようにじっとしているのを見つけました。同じ場所で何匹ものエゾリスを見かける機会はあまりなく、今日は運がいいな、などとほほえましく眺めていたのもつかの間。突然、戦いの火ぶたが落とされたようです。
 茶色い尾の一匹が、他の枝へ飛び移ったのをきっかけに、それまでじっとしていた他のリスたちが、一斉にそのリスを追いかけ始めたのです。木の枝から枝へ、幹の上から下へ、爪が木肌を引っ掻く乾いた音と、彼らの鳴き声が10分以上響いていたでしょうか。すぐ目の前までリスが来ても、動きが速すぎて、カメラのピントを合わせる間も与えてもらえません。やがて茶色い尾のリスが巣穴へ逃げ込み、もう一匹がその入り口を守るように止まって、幕が下りました。
 始めはケンカなのかと思いましたが、威嚇する声とも違い、相手を傷つけるような様子もないことから、茶色い尾の一匹(メス)を射止めるための、オスたちの猛アピールなのだと気付きました。きっと、最後に巣穴の近くに来ることを許された一匹が選ばれた相手だったのでしょう。
 長く十勝に暮らしていますが、エゾリスの恋の争奪戦を目にしたのは実は初めてでした。ほどなく、可愛らしい子どもたちの姿も見られるでしょうか。そう言えば、エゾリスの子どもも見かけたことがありません。とても身近な動物ですが、意外に知らないことが沢山あることに気づき、また新たな宿題ができました。


2014年4月21日