株式会社 ヒューエンス
HUENSは、水と空気をきれいにして、自然に戻す
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 津軽海峡線


 学生時代に、"ブラキストン線"という生き物の分布境界線があることを知りました。それは、津軽海峡を境に北海道と本州の生物相が大きく違っていることを示す線で、津軽海峡線とも呼ばれています。
 北海道には、本州にいるツキノワグマやニホンザルなどは生息せず、代わりに本州にはいないヒグマやナキウサギなど北方系の動物がみられます。氷河期に大陸と陸続きになった北海道に対し、水深の深い津軽海峡には大河が残り、生き物の行き来を分断したため、本州との生物相に違いができたのだそうです。
 年々遠くなりつつあった学生時代の記憶が呼び戻されたのは、偶然、写真の動物に出会ったからです。ビロードのように細く密な毛に覆われ、小さな目にとがった鼻、脚は短いけれども手が大きく、細長い尻尾が見えます。ネズミ?モグラ??
 地味な割にどちらとも判断のつかない姿に、逆に興味をそそられ調べてみると、トガリネズミだということが分かりました。ネズミと名はついているものの、げっ歯類ではなく、モグラやハリネズミに近い生き物なのだそうです。特徴からすると写真の一匹は、北海道やサハリン、ロシア沿岸部に生息するオオアシトガリネズミではないかと推測されました。また、日本のトガリネズミは固有種が多く、北海道にも本州にも共通して生息している種がいないようです。
 そう言えば、北海道に来てからモグラ塚を見た記憶がなかったような・・・と、新たに湧いた素朴な疑問をたどっていくと、モグラも北海道には生息していないことが分かりました。
 北海道と本州は20キロほどの距離ですが、地下を掘り進められるモグラやトガリネズミにとっても津軽海峡はとても深かったのです。でも、そのお蔭で、現代の私たちは多様な生き物たちを目にし、その違いから太古の地球の姿をも想像できる面白さが残されました。トガリネズミの地味な姿も、つきつめてみるとなかなか興味深いものだと知ることができました。


2015年05月25日