料理を作るテレビ番組が流れていると、つい見入ってしまいます。できあがる料理が美味しそうだからという単純な理由も勿論ありますが、作る人の手さばきや、野菜を切る音や炒める音が小気味よく、見ているだけで心が弾むからです。 　先日見たのは、日記に綴られた献立を再現するという番組でした。日記を書いたのはある女優さんで、それは実に26年もの長い年月の記録でした。忙しい仕事の合間で、どうして毎日丁寧な食事を作り続けることができたのか、日記の中には「ご飯のために、毎日せっせと働いている」という趣旨の言葉も記されているそうです。 　師走という時節柄、何だか目の回りそうな日が続くと、"働くために食べる"毎日になりがちです。働くために食べていると、食事はエネルギー補給という、事務的な位置付けになり、味わうことや作る楽しみが後回しになってしまいます。目線を変えて、ご飯のためにせっせと働いてみたら、忙しい毎日も、もっと楽しく健やかに乗り切れるのかもしれません。この寒い季節は特に、ささやかでも温かさの伝わる料理を、気心の知れた人たちと共有することが、何よりの活力になります。

2019年12月09日

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