楽しきミクロの世界
その道の玄人に話を聞くというのは楽しいものです。先日参加したのは、自治体が主催した苔の観察会です。針葉樹と広葉樹の入り混じった豊かな森の中で、小さな植物たちの更に低い足元をやさしい緑で埋めてくれる存在に気付いた時から、苔はずっと勉強したいと思っていた対象でした。十勝でも見学ツアーがあることを知っていましたがなかなか機会をもてずにいたところ、町内で行われる観察会の案内に、待っていましたとばかりに飛びついたのでした。
苔の特徴やルーペの使い方など説明を受けて、いざフィールドへ!でも、勇んで進んだ10歩先にはゼニゴケがあり、入り口横の石碑にはギンゴケがあり、普段気づかない場所にも観察対象が沢山ありました。ギンゴケなどは連日の高温でからからに乾いていましたが、講師の先生が霧吹きをかけてみるとみるみる緑の色を取り戻していくことに、皆から驚きの声が上がりました。
ルーペを覗くと蛇の目模様が見えたり、色も銀が混ざったような緑だったり若葉のような緑だったり、どいう訳かこの石碑にしかつかない種があるだったり、説明を受けるたびに「ほ~!」とか「へー!」とか、自然に声が出てしまいます。
終盤、池の近くで何種類かの苔をみんなで観察していたところ、崖の上の木にエゾフクロウが飛んできました。首を左右に動かしながら、明らかにこちらの様子をうかがっています。夜行性のはずですが、私たちの楽しそうな声がよほど気になったのでしょうか?
観察会が終わった後も、質問待ちの列ができていました。私の前の方が聞いた「これから苔を覚えたいのですがどうしたらよいですか?」への先生の答えは、「図鑑とにらめっこをして一つ一つを覚えようとしても大変なので、まずは心行くまで眺めて、どんなところが美しいと思うか、どんなところが好きかを感じながら、苔を見る目、見つける目を育ててみてください」とのこと。とても素敵な答えでした。