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何もないだろう?

 蒸し暑い日が続いています。本州の梅雨はこんなだったかもしれないな・・・などと思い出されることがありますが、それでもまだ、あの梅雨のただ中の、じとっと逃げ場のない空気に比べればずっと過ごしやすいのだろうと、思い直します。
 さて、恩師が次のライフステージに進むと聞き、週末、送別会に行ってきました。つい2週間前に、アジアでの開催は初という国際学会を帯広でコーディネートし、無事終えたばかりでしたので、必然、話題はそこへ集まりました。
 講演の主題に入る前に、聴衆の心をどう掴むかは演者の腕の見せどころでもありますが、それを恩師は、「見てのとおりここには何もないだろう?」と言って盛大な笑いを取ったと聞いてびっくりしました。何年も前、帯広での開催が決まった後、準備に奔走する姿を見ながら、帯広には”日本”を感じられる観光資源がほとんどないので、海外からの参加者を楽しませるのはきっと大変だろうと感じていたのです。それなのに、そこを真正面から肯定して笑いに変えてしまうという胆力には、今更のように感服せずにはいられませんでした。それだけではなく、会が終了した後、「今まで十数年、この学会に参加し続けてきて、どこも素晴らしかったが、帯広が一番だった」というメールまで受け取ったと言います。そこに至る過程には、どんな創意工夫があり、どんな関係を築き、どんな紆余曲折を経てなし得たものなのだろうと想像するだけで、なんだか胸がいっぱいになってしまったのでした。
 人の気をひこうとしたとき、自分ならば、”ある”もの挙げていこうとするでしょう。自慢できるものを一つずつ積み上げて、その高さを誇るのです。でも、やりきった人にはそんなことは必要ないのかもしれません。何かを残すことができるという自負があればこそ、「何もない」とネタにすることもできるのかもしれません。
 先生はどこまでいっても先生なんだなと、しみじみしてばかりもいられません。次は自分が、「帯広が一番」と言わしめるだけの人になる番なのですから。
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