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青いしっぽ

 体長は6~7センチほどでしょうか。青いしっぽの主は、ヒガシニホントカゲの子どもでした。
 ここは、大雪山系のふもとです。初夏、この辺りにはダイセツヒナオトギリという小さな黄色い花が咲きます。大雪山系の固有種で、絶滅危機種にも指定されている、とても貴重な植物です。そんな場所で、これまで見たこともない、メタリックな青いしっぽをもった生き物を見つけてしまったのですから、なんだか久しぶりにドキドキとしてしまいました。
 帰って早速調べてみると、何のことはない、東日本から北海道にかけて広く生息している、ヒガシニホントカゲの幼体だということがすぐに判明しました。そして、別の場所で何度か見かけたことがあった、茶色いトカゲのような生き物も、この種の成体だったということも同時に分かりました。
 こんな経験は、数えきれないほどもっています。珍しい種ではなかったことにがっかりしつつも、それは、自分の視野がいかに狭かったかということを自覚させてくれる経験でもあります。人は、物事を見たいようにしか見ることができず、自らの知識から外れたものは目に入りにくいようにできています。これまで存在を知らなかった私は、道端を横切る小さな影に気づかなかったことが、何度もあったのかもしれません。そもそも、北海道にトカゲがいることも知らなかったのです。でも、青いしっぽのトカゲを知り、一歩、知識の枠を広げることができました。次に湿った岩場を歩くときは、きっと見逃さないでしょう。
 青いしっぽは、天敵から逃げる能力が未熟な子どもたちが生き延びるための手段として、進化したと考えられていて、成体になると消えてしまうそうです。私の写真にしっかり納まってしまうぐらいですから、まだまだ逃げる修行は途上のようです。そう言う私自身も、生き物を見る目は、まだまだ青いのです。


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