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小さないたずら

 お盆を過ぎ、空がなんとなく高くなったような気がします。山にミヤマリンドウやタカネトウウチソウが咲いているのを見つけて、やはり秋なんだと納得します。でも、その隣で、ワタスゲが純白の綿毛を風になびかせています。ワタスゲは霧多布湿原などでは6月中旬に見頃を迎える植物ですから、のんびり屋の初夏の花と、スタートダッシュの秋の花とが、一緒くたになってしまうところも、山に流れる時間の不思議なところです。
 不思議と言えば、このタカネトウウチソウは、本来は白一色の花ですが、ここではピンクから白へのグラデーションになっています。実は別の種なのか?変異?それともウイルス?まさか気まぐれ?勉強中の身を、途端にあたふたとさせます。
 命の営みは、厳格な面と、ダイナミックで自由な面がいつも背中合わせになっているように見えます。後者は、小さないたずらのように、前触れもなく現れては消えていくものもあるでしょう。それが消えずに積み重なると、やがて多様性へとつながっていくのかもしれません。
 そう考えると、この小さないたずらを、重箱の隅をつつくように追求することは、もしかしたら野暮なことなのでしょうか。自然が生み出す偶然の美を、ただそのままに感じていれば、十分なのかもしれません。でも、ささいなことほど、一度気づいてしまうと、気になって仕方がなくなってしまう生き物もいます。図鑑や検索エンジンを駆使しても、必ずしも種明しにたどりつけるとは限らない小さないたずらに、足を取られてつまずきながらも、ついついのぞき込んでしまう性をもった生き物です。


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