花と虫と
春一番、雪の下でも元気に芽を出している姿が嬉しいチューリップは、北海道では夏の間も球根を植えっぱなしにできるものもあり、宿根草のように楽しむことができます。特に原種に近い品種はその傾向があるそうですが、確かに我が家でも植えっぱなしで何年も花を咲かせていて、今年も連休明けの気温の上昇とともにその花姿を見せてくれていました。その中で最近気づいたのがヒメビロウドコガネの存在です。体長1センチに満たない小さなコガネムシですが、どういう訳かチューリップの花から脱出できずにもがいている個体が必ずいるのです。時には一つの花に二匹がトラップされていることもあります。食事のために花に入り込んだのだろうと考えますが、飛ぶことができる虫がどうしてこんな事態になるのか、一匹ずつ花から出してやりながら、不思議でなりませんでした。
植物と昆虫との関係は数億年にもわたり、お互いの種の多様性がもたらされる共進化を遂げて今日に至っていると考えられています。注目を浴びることはなくても、道端の野の植物たちや小さな虫たちの間にも、独自の関係が築かれているはずです。一方で、その組み合わせが変われば状況は全く異なるものになり、おそらく、チューリップとヒメビロウドコガネの関係はそのことを表しているのでしょう。日本に住んでいるヒメビロウドコガネには、日本には自生していなかったチューリップのように、深い坪型の花の中から飛び立つ術は、これまで必要なかったのです。
私たちの選択が、思わぬところで思わぬ生き物に影響してしまうかもしれない可能性を、事前に排除すことは難しいかもしれません。ですが、そこに気づき、何か行動ができるのも人間だけです。その力は、どんなささいな場面でも使っていかないといけないなと思うのです。