思い込みの先
どうしてそうなったのか今にして思えば不思議な思い込みを子供の頃にもっていて、それが妙な憧れにつながっていたことが少なくありません。私の場合はそれが動植物に向くことが多くあり、その中のひとつが「リンドウ」だったなと思い出しました。秋の花と言えばリンドウという思い込みを抱いていたのですが、身近な野山では探せど探せどこの青紫の花を見つけることはできず、ずっと憧れの存在だったのです。
北海道へ来て初めてエゾオヤマノリンドウ(写真)を見たのは、確か紅葉が始まる少し前の黒岳だったでしょうか。リフトに乗って7合目まで向かう途中の眼下に、惜しげもなく青紫の花が広がっているのを目にして大興奮し、今ここでリフトから下ろしてほしい!と、そわそわとし続けた記憶があります。その後、春に咲く淡い青紫のフデリンドウや反対に青紫の色素をぎゅっと閉じ込めたかのようなリシリリンドウ、白色のエゾオヤマノリンドウなど、さまざまなリンドウの仲間に会うことができ、彼らは秋だけに咲くものでもなく、青紫色だけでもないことを知ることができました。
そんな昔の自分との答え合わせができるようにもなり、どうしてあんな思い込みをしていたのかと不思議に思うことも少なくありませんが、一方でその真っ直ぐな気持ちが自らの好奇心をかきたててくれたり、視野を広げる手助けをしてくれたりしたなとも感じます。年齢を重ね、さまざまな知識に触れてきたたことによって、そんな思い込みは少なくなってきたかなと思う節もありますが、実際のところは日々の慌ただしさのなかで、そんな気持ちを後回しにしてしまったり、思い込んだままその先に広げていないだけなのかもしれません。世界を広げる種は、自分自身の中にも沢山あるはずということを思い出し、時には向き合ってみないと宝の持ち腐れだなと、青い空にまっすぐ向かう青紫の花を眺めていると素直に思えてきます。