夏の成績書
里山の縁ではカシワの幼木が育っていて、紅葉が始まっていました。樹の種類に明るくない私でも、木の葉がそれぞれに色づき始めることで、あぁこれはカシワだったか、あっちはモミジで、こっちはサクラだったかと気づくことができます。
少し前までは、はっとするような紅に染まるモミジが好みだったのですが、近ごろは、赤とも黄ともオレンジとも分けがたい色を見せてくれるカシワなんかもお気に入りです。上からのぞき込めるぐらいのカシワの幼木は、渋い色の葉を、まるで花びらのように広げています。後ろにそびえる大木たちは、覆いかぶさるように葉を広げていますから、日陰になることも多かったのではないかと想像しますが、それでも、幼木たちは地道に栄養を蓄えてきたのでしょう。きれいに染まった紅葉は、元気な木の証拠であって、夏の頑張りの成績書のようなものです。
さて、柏餅の香りが昔から好きな私は、紅葉したカシワの葉っぱも、やはり好きな匂いでした。近くに寄ると鼻をくすぐる香りに、心も、つられてお腹も反応します。色合いだけではなく、香りにも豊かさを増す草木を味わうのも、秋の楽しみのひとつです。
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